新潟散歩⑥フィンチアンドホーム
北欧流のゆったりした暮らし方を提案するお店
1873年に開園した国指定名勝の白山公園や、おしゃれな雑貨店やカフェのある古町(ふるまち)エリア。そこから関屋方面へ徒歩約10分、学校町通り沿いの趣のあるコンクリートビルに「フィンチアンドホーム(FINCH&HOME)」はあります。今年6月にまず、2階部分のショールームがオープンし、北欧のライフスタイルに学んだという心地よい暮らしを提案しています。ギャラリーでは「ここでも、ルート・ブリュック展」と題した、ポップアップイベントも開催中。オーナーの塚越大助さんに話をききました。
本当にやりたかったお店作り
——まず、お店の名前が気になりました。
フィンチって僕が好きな鳥の名前なんです。小さくて見かけも地味なんだけれど、飛ぶ姿も、鳴き声もとても華やかできれい。そんな鳥が飛び交っているようなホームスタイルを作りたい、と思って「フィンチアンドホーム」と名付けました。
——今年6月にオープンしたわけですが、それ以前は塚越さんはどんなことをされていたのですか。
商業施設のプロデュースや、家具店の企業再生や企画などに長く携わってきました。もともと家での過ごし方や、心地よい住まい方というものに興味があって、僕が理想とする考え方に合致したのが北欧のライフスタイルだったんです。実際にスウェーデンやフィンランドに行ってみたら、本当にそこにはゆったりした生活を実践している人たちがいて。それで決心して、勤めていた会社を辞めて、やりたかったお店作りをすることにしました。北欧のライフスタイルに学び、ゆったりとした暮らし方を提案しています。
——どんな提案でしょう。
例えば、よい睡眠を取るためには、よい照明が大切です。デンマークのルイスポールセンの照明は、光源が見えないため目にやさしく、リラックスできます。寝具は、京都で190年続く老舗であるイワタ。有害物質を排除した自然素材にこだわり、寝床を快適にします。靴下やフェイスタオルは、奈良の益久染織研究所のコットン製品を。自然栽培で育てたコットンをガラ紡で織った、やわらかく肌触りのよいものなんです。
——北欧のブランドでそろえているわけではないのですね。
僕らは北欧雑貨店ではないので。北欧では、自分たちの衣食住にこういったコンセプトの製品をごく自然に取り入れているんですよね。提案したいのは、おしゃれなデザインというよりは、リアルな生活なんです。
家具は、フィンランドのアルテックや広島のマルニ木工、デンマークのカールハンセン&サンやスイスのヴィトラなども扱っています。そのなかでもライフスタイルのストーリーがある商品を紹介しています。どんなストーリーを選ぶかは、お客様自身が自分で決める。
——自分で選ぶ。
そう。だって、人が選んだもののなかに住んでも違和感がありますよね。そういう意味では、僕らの店作りは、ほかのインテリアショップとは違うかもしれません。扉を開けたら、まず靴を脱いであがってもらうし。コーヒーを淹れて、ゆっくり過ごしてもらうんです。
暮らしも遊びもめいっぱい楽しむフィンランド人
——新潟には北欧のお店ってたくさんあるのでしょうか。
北欧ブランドに特化したお店は少ないです。でも、北欧のライフスタイルに影響を受けている人たちはたくさんいると思います。新潟は雪も降るし、季節の変化がはっきりしている。そんな共通点を感じている人たちと、「新潟を北欧化したいね!」なんて話しているんです。
——「おうち時間」が浸透し、家での過ごし方を見直すタイミングですね。
そう、ワンアイテムでも、小さなものでも取り入れてみようという人が増えてきました。例えば、このデンマーク人アーティスト、ビヨン・ヴィンブラッドのフラワーベースが人気で。サイドテーブルや窓際に置くだけでも楽しいじゃないですか。北欧の人たちって、冬が長いからそういう工夫を自然にやってきたんですよね。
——塚越さんはいつ北欧と出会ったんですか。
6年くらい前です。新潟に新しい商業施設を作るので、そこで新しいライフスタイルを提案しようと企画していました。その仕事をきっかけに、北欧を訪れたのが最初です。とにかく忙しくしていたので、スウエーデンの人たちがキャンドルを灯してゆっくり食事しているのを見て、驚きました。本当にこういう暮らし方があるんだって、感銘を受けましたね。
その後デンマークのコペンハーゲンやフィンランドのヘルシンキにも。商談で立ち寄っただけでしたが、オフィスでも皆さんせかせかしないで、ゆったり過ごしているんですよね。
本当は今頃、雪が降る前にフィンランドをゆっくり旅する予定だったんですけれど。レンタカーを借りて北の方まで。
——車で!
実は僕、子どもの頃から父親の影響でラリーが好きで(笑)。僕の大好きなラリードライバーがフィンランド人でまだ現役なんですよ。だから、ずっとフィンランドって憧れだったんです。
フィンランドってラリーも盛んだし、エアギターの聖地だし、暮らしも遊びもめいっぱい楽しんじゃおう、楽しければいいじゃないって感じですよね。
「ここでも、ルート・ブリュック展」開催中
——現在フィンチアンドホームでは、「ここでも、ルート・ブリュック展」と題したポップアップイベントを開催中です。コレクターによるブリュック作品の実物と、前田景さんによるブリュックのサマーハウスの写真を展示しています。
本当にたまたま、新潟在住でブリュックの作品をお持ちの方と出会うことができ、さまざまなご縁を感じながら、僕らも何かできたらいいなと思ったんですよね。もちろんお店のことも知ってもらいたいけれど、それ以上に、まずは新潟の皆さんに北欧のアートや文化を見てもらえたら。
店内にフィンランドのシーンを作って、同じコレクターの方にお借りしたアルテックの貴重なヴィンテージ椅子も併せて展示します。
12月中には1階のスペースも、まだ仮ですがオープンする予定です。こちらもインテリアのショールームと、ハンドドリップのコーヒースタンドを作りたいと思っています。
——最後に教えてください。新潟ってどういうところですか。
まず、上越、中越、下越と地域によって全く気質が違いますね。市のなかでも区によってばらばらな印象です。それでいて新潟のなかですべて完結している。外に出ないし、外から入ってくることもなかなかありません。言い方を変えると、豊かな自然があって、おいしい食べ物があって、満足度が高いのかもしれません(笑)。
——おすすめの楽しみ方は。
いわゆる観光としての見所もありますが、僕のおすすめは、街でゆっくり過ごす、ことかな。新潟の冬って、空にずっと雲がかっていて、信濃川沿いの萬代橋付近はロンドンとか、ちょっとヨーロッパの街みたいなんですよね。そぞろ歩きが楽しいんじゃないかなと思います。
——ありがとうございました。