THE NIIGATA BANDAIJIMA ART MUSEUM

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THE NIIGATA BANDAIJIMA ART MUSEUM

エスポー近代美術館での展示風景(2016年)
Tapio Wirkkala Rut Bryk Foundation / EMMA - Espoo Museum of Modern Art

展覧会のタイトルについて

本展の名称は、「ルート・ブリュック 蝶の軌跡」です。

ルート・ブリュックのコレクションを寄託され、ブリュックの研究を進めているエスポー近代美術館のキュレーター、ヘナ・パウヌさんは、「蝶の軌跡」(英:Touch of a Butterfly)について、次のように説明してくれました。

「蝶は、ブリュックにとって大切なモチーフです。蝶の研究者であった父に連れられて、幼い頃に夏の森で蝶を追いかけた思い出は、その後もずっとブリュックのイマジネーションや作品のなかで生き続けます。特に、1950年代後半に生み出した蝶の陶板シリーズは、ブリュックの代名詞として世に知られるようになりました。
彼女は、この陶板を数十点も壁にかけ、まるで無数の蝶が羽ばたいているようなインスタレーションをつくって、人々を感動させました。
また蝶は生き物であり、この小さく美しい生き物を育む“自然”こそ、その後のブリュックの生活にとっても作品にとっても重要なテーマとなっていったのです」

蝶の陶板シリーズを境に、ブリュックの作風は、小さなモジュールを組み合わせて、自然を主題とした大型作品をつくる方向へと転換していきます。ブリュックにとって蝶は、大切な思い出のシンボルであると同時に、アーティストとしてのターニングポイントを迎えるきっかけにもなったというわけです。

パウヌさんは続けます。

「一方で、蝶はとても繊細で壊れやすい存在というイメージがありますね。想像してみてください。蝶がひらひらと飛んできてあなたにそっと触れたなら、それは息を呑むような、奇跡的な瞬間に違いありません。ルート・ブリュックのアートの世界に触れることは、日常生活の延長線上で、まるでささやかな奇跡を目の当たりにするような、秘めやかで美しい体験に似ている。私たちはそう考えているのです」

蛹からかえって美しい羽を広げ、心にまかせて花から花へとうつろうようすは、意のままに自由を行使する力強さと同時に、明日をも知れぬ、壊れやすくはかなげな印象もあわせもっています。そんな蝶の姿やふるまいは、ブリュックの作品の変遷、そしてルート・ブリュックというアーティストそのものにも重なるところがあるのです。

 

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