ももぐさ、ブリュック語り 4「フィンランド」
多治見で「ギャルリ百草」を営む廊主、陶作家の安藤雅信さんが、地元である多治見について、またブリュックの作品についての印象を徒然に語ります。ギャルリ百草の写真とともに。全7回。
Photo Rui Mori
フィンランド
昨年、フィンランドに行ったんです。
印象的だったのは、建物に動物や神話の登場人物のような彫刻がくっついていたり、街のなかに突然ゴツゴツした岩が現れたり、サンタクロースやムーミンが住んでる国だし、精霊というかアニミズムが生きている国だなと思いました。
八百万の神の国・日本もアニミズムですね。自然と生活が近い距離にあって、自然からインスパイアされることが多いという点で共通しています。欧米のデザイナーが机上でモダニズムを追求したのとは違う根元を持っている。フィンランドに行ってみて、そのことがよくわかりました。
それから、フィンランドって生活とデザインがものすごく一体化していますね。フィンランドの人が言ってましたが「冬が長いから、家のなかにいることが多い。だから家の内部を快適にすることをいつも考えているんです」って。
アアルトが設計した台所だって、きっと奥さんのアイノ・アアルトの意見がたくさん入っている。住み手の事を考え、使い勝手はとても良さそうだった。実体験が生み出したデザインというか、ブリュックの陶板や立体作品も、美術館ではなくて、家のなかに飾ることを考えて作ったのではないでしょうか。
アーティストって若い時は、自己表現をしたい、認知してもらいたい、という欲求があるから、スタイルの確立とか、そういうところにエネルギーを費やす。けれど、ある程度作家活動をしていると、使い手の意見も耳に入ってくるし、人に使ってもらったり、楽しんでもらうことの喜びも大切になってくる。アーティストとしてのステージが変わるというか増えるというか。
ある程度認知されてきて、自分の作品を作るという方向に加え、もうちょっと生活に密着した思考に寄っていって、多様性という抽象的な表現が生まれていった可能性もありますよね。