THE NIIGATA BANDAIJIMA ART MUSEUM

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THE NIIGATA BANDAIJIMA ART MUSEUM

Rut Bryk, "The Wedding", 1944
Tapio Wirkkala Rut Bryk Foundation’s Collection / EMMA - Espoo Museum of Modern Art
© KUVASTO, Helsinki & JASPAR, Tokyo, 2018 C2396
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ブリュック作品の魅力

ブリュックの作品にはたくさんのチャームポイントがあります。

ディテール 細部への視線

グラフィックデザイナーとしてキャリアをスタートしたブリュックは、1942年にアラビアの美術部門に入ります。初期には、職人がつくった器の表面に筆で着彩していました。人物の表情や静物の細部まで描き込み、美しくもどこかはかないファンタジーの世界をつくりあげたのです。

50年以降、ブリュックは職人と一緒に、新しい技法を確立します。それは、ブリュックがグラフィックデザイナー時代に手がけた版画の技法にとてもよく似ています。まず、下絵を彫った石膏をやわらかい土に押し付けて、陶板に輪郭線をつけます。その表面を削ったり、スタンプで模様をつけ、上から釉薬を流すと、まるで水のなかに模様が浮かび上がるような効果を得るのです。

Rut Bryk, “The Funeral”, 1957-1958, TWRB Foundation, EMMA
© KUVASTO, Helsinki & JASPAR, Tokyo, 2018 C2396
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アラビアでは大量生産品向けに、あらかじめ絵が印刷された転写シールを貼って焼成するという手法がありました。ブリュックはアラビアでは大量生産品をつくりませんでしたが、その手法を一部の作品に取り入れています。それは、マスプロダクションの技法を使い、オリジナルのアートをつくるというコンセプチュアルな取り組みでもありました。

空間的であること

ブリュックは、50年代後半くらいから陶板を組み合わせて空間を意識した作品やインスタレーションをつくるようになります。まるで無数の蝶が羽ばたいているような陶板の展示、都市計画模型のような立体作品、ハニカム型のモジュールを組み合わせたパーテーションのような作品などを経て、やがてたくさんの小さなタイルのピースを用いたレリーフ作品に取り組んでいきます。

これらの作品は、室内の光の効果や、鑑賞者の動きによって完成する「空間的な作品」と言うことができるでしょう。もともと建築家になりたいと思っていたブリュックは、作品と空間との関係性をとても大切にし、最終的に、建築そのものと一体化した大型モニュメント作品の制作につながっていくのです。

Rut Bryk, “The City”, 1958, TWRB Foundation, EMMA
© KUVASTO, Helsinki & JASPAR, Tokyo, 2018 C2396
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コントラストと呼吸

色、形、タイルの凹凸が生む陰影――。ブリュック作品にはさまざまなコントラストを見つけることができます。ブリュックは60、70年代のポップ・アートやオプ・アートなどの影響を受けて、色と形の視覚的効果にも関心をもっていました。
ブリュックの娘であり、現代アーティストでもあるマーリア・ヴィルカラさんは、この時期の作品について「まるで、色が呼吸しているようです」と話します。確かに、ずっと眺めていると不思議な動きやダイナミズムを感じます。ミニマルでありながら、壮大な宇宙観をあらわす、例えば禅の「円相」のような世界に通じるものがあるのかもしれません。

Rut Bryk, “Suistamo”, 1969, TWRB Foundation, EMMA
© KUVASTO, Helsinki & JASPAR, Tokyo, 2018 C2396
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安心感

ブリュックは自身の作品についてほとんど語ることはありませんでした。フィンランドで行われた生誕100周年の展覧会では、解説のキャプションも極力省かれました。ブリュックの作品には、その前に立つだけでそっと優しく包み込まれるような安心感があります。そこにはきっと何の説明もいらないのかもしれません。

Rut Bryk, “Spring Clouds”, 1981, TWRB Foundation, EMMA
© KUVASTO, Helsinki & JASPAR, Tokyo, 2018 C2396
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