エスポー近代美術館のブリュック・コレクション
フィンランドの首都ヘルシンキから地下鉄で約20分。ヘルシンキに隣接し、同市に次いで二番目に大きな都市エスポーにあるエスポー近代美術館(EMMA – Espoo Museum of Modern Art)は、同国最大の展示面積(約5,000平方メートル)を誇る公立美術館です。フィンランドと海外作家による20世紀以降の現代アートから成るEMMAコレクション、サースタモイネン財団コレクション、そしてタピオ・ヴィルカラ ルート・ブリュック財団(TWRB Foundation)のコレクションが大きな柱となっています。
TWRB財団は、ルート・ブリュックと、その夫でフィンランドを代表するデザイナー、タピオ・ヴィルカラ(1915-1985)の作品やスケッチ、資料など5,000件以上にもおよぶコレクションを所有し、EMMAに寄託しています。
EMMAでは、この膨大なコレクションのリサーチを進めながら、2015年にタピオ・ヴィルカラの生誕100周年展、2016年にブリュックの生誕100周年展を開催しました。そして、2017年11月には館内に「オーキオ(Aukio)」と呼ばれるスペースを設置し、ブリュックとタピオ・ヴィルカラの作品をすべて収蔵、常時その一部を公開しています。オーキオはいわば、“見える倉庫”であり、ここに来れば必ずブリュックの作品を見ることができるというわけです。
オーキオは「回」の字のかたちをしており、中央が展示スペース、その周りをストレージの棚が囲んでいます。外側のグレーの棚には、まだ整理されていない作品や修復中の作品が並び、内側の白い棚にはミニ展示のテーマに合わせてセレクトされた作品が置かれています。また、ガラス張りの作業室では専門のスタッフが作品の撮影や修復をしている様子を見学することができます。
コレクションを担当するチーフキュレーターのヘナ・パウヌさんは説明します。
「膨大なコレクションを調査・整理するこのプロジェクトは長期を見据えています。でも、オーキオができたことで作業は格段にはかどっています。ブリュックが用いた技法についても研究が進んでいます。現在は、ブリュックが手がけたテキスタイルの調査を本格化したところです。ブリュックは、たくさんのすばらしいテキスタイルを残していて、それを日本の皆さんにご紹介できるのは嬉しいことです。また家族のアルバム写真や映像資料などのデジタル化にも着手し、ふたりの偉大なアーティスト・デザイナーの功績をさまざまな形で体感していただきたいと考えています」。
2019年から日本で開催する「ルート・ブリュック展」は、ブリュック研究の最前線を担うEMMAとの密接なコラボレーションにより企画制作されています。膨大なアーカイブと最新の調査を踏まえた、選りすぐりの作品や貴重な資料が初来日します。
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