「春の雲」1981年
心待ちにしている季節
長い長い冬が終わると、フィンランドの人々は大きく背伸びをして、待ちこがれた春の訪れを全身で受けとめ、祝福します。
空にぽっかり浮かぶ春の雲を見あげていたら、突然のお天気雨。雲間から雨粒たちがぽろぽろとこぼれ落ち、まだ氷が残る湖面の上で元気に跳ねかえって、冬にしばしのお別れを告げます。
ブリュックは60代半ば。みずみずしく鮮やかな釉薬の表現から、真白なモザイクタイルによる表現へと、セラミックアートの新たな可能性を模索しつつありました。
心のなかで無限にひろがる色彩世界を描くために、ひとつひとつのタイルが織りなす光と影にゆだねていったのです。