THE NIIGATA BANDAIJIMA ART MUSEUM

EN

THE NIIGATA BANDAIJIMA ART MUSEUM

吉澤 葵さん。「CASE GARELLY」にて

ブリュックの作品はまるでテキスタイル!

08. AUG 2018

フィンランド在住のテキスタイルデザイナー、吉澤 葵さん

吉澤 葵さんは、フィンランド在住のテキスタイルデザイナー。ラプアンカンクリやスヴェンソンなどにデザインを提供する傍ら、タペストリのアートワークも手がけています。吉澤さんはブリュックのファンで、特に後期の抽象的なタイル作品がお好きとのこと。「ブリュックのタイル作品はテキスタイルに通じる」と言います。東京・代々木八幡にある、北欧とテキスタイルをテーマにしたギャラリー「CASE GARELLY」で開催されていた個展「Hetkiä」(2018年7月6日‐7月15日)で、吉澤さんに話を聞きました。

――吉澤さんはフィンランドを拠点に活動されているんですね。

フィンランドに7年住んでいます。ずっとテキスタイルとアートを勉強していて、スウェーデンとノルウェーの留学を経て、それからフィンランドの大学院でデザインの勉強をしました。北欧ということでは12年目となります。現在は、テキスタイルメーカーのデザインと自分のアートワークを制作しています。

個展「Hetkiä」の展示風景 Photo: Rui Nishi

――フィンランドのテキスタイルメーカー、ラプアンカンクリ(LAPUAN KANKURIT)にデザインを提供しています。

これは「SADE(雨)」という柄で、フィンランドの雨をイメージしました。フィンランドはたくさん雨が降ります。森に行くと雨上がりに木のにおい、自然のにおいが強くなる。その新鮮な空気感を表現したかった。最初に、水彩絵の具で描いたシンプルな柄をラプアンカンクリのオーナーに見せたところ、「織りたい」と言ってくれたので実現しました。

ラプアンカンクリにデザイン提供した「SADE(雨)」。Photo: Rui Nishi

ウールのブランケットもつくりました。フィンランドの伝統的なタペストリである「リュイユ織」からインスピレーションを受けています。リュイユをもっとモダンにして、現代のインテリアに使えたらいいなと思って。この頃はまだブリュックのことを知らなかったのですが、今思うと、なんとなく後期の抽象作品に通じるように感じます。

左端が、ブランケット「AINO」。 Photo: Rui Nishi

ブリュックの作品はまるでテキスタイル

――ブリュックとの出会いは?

アラビア製陶所に大きなタイルの壁画が飾ってあって、ずっと素敵だなと思っていました。市庁舎にも大きな作品がありますよね。それも見に行ったりして。でも、誰がつくったのかはあまり気にかけていませんでした。「ああ、この人だったんだ!」って、やっとルート・ブリュックのことを知ったのが、2016年にEMMA(エスポー近代美術館)で行われたブリュックの生誕100周年記念展だったんです。

――特にどの作品が好きですか。

後期の抽象的なタイル作品が好きです。私自身が抽象的なデザインを描くので、そういうものが好きなんです。

ブリュックのタイル作品はテキスタイルに通じるものがあると思います。ひとつひとつのタイルの置き方で、全体のテクスチャや光の反射が変わる。眺めていると、「とてもよく考えられているなあ」と驚かされます。

色の使い方もとても好きです。「青」と言っても、ターコイズのような明るい青から深くて濃い青まで、色使いがとても繊細で幅が広い。ほんとうに、テキスタイルそのものだなと思うんです。

――ブリュックもフィンレイソン(フィンランドの老舗テキスタイルメーカー)でたくさんのテキスタイルをデザインしました。2019年から東京ではじまる展覧会でも、はじめてブリュックのテキスタイルを紹介します。

私もブリュックのテキスタイルについてもっとリサーチしたいと思っています。最初にブリュックのタイル作品を見た時に、「これはテキスタイルそのものだ」と感じたあの感覚がどこからくるのか、調べて自分でも納得したい。

織りのテキスタイルって、ピクセルでプログラムするんですよ。ブリュックのタイル作品もいわば小さなピクセルでできているじゃないですか。その考え方は、織物にとても近いと思うんです。

 

もしもルート・ブリュックがサウナをつくったら

――ブリュックをイメージしたサウナのインスタレーションをつくったそうですね。

フィスカースの主催で、さまざまなメーカーが若手のクリエイターと一緒にインスタレーションをつくるというプロジェクトでした。ラプアンカンクリから「好きなアーティストを挙げて、その人や作品にインスパイアされたサウナをデザインしてほしい」と言われた時、真っ先に「ルート・ブリュックで!」と答えました。

Fiskar Summer Houseの会場。さまざまなクリエイターとメーカーがコラボレーションしてインスタレーションをつくった。 Photo: Kerttu Penttilä

――どんなサウナをつくったのですか。

ブリュックが夏小屋のサウナをつくったらどうなるか。そんなイメージでつくりました。

ブリュックって、マテリアルと色彩のディテールに細心の注意を払っているように思います。ラプアンカンクリも大切にしているのはディテール。遠くから見るとほぼ無地に見えるけれど、近づくとものすごく凝ったストラクチャーが見えてくる。そういうテキスタイルのつくり方を、インスタレーションで見せられたら、と考えました。

インスタレーション全体をブリュックのタイル作品に見立てて、ベースを木の色にして、そこに白いテキスタイル、ライトグレーのソファ、ベージュのクッション、ターコイズや黒のセラミックなどを使って、少しだけアクセントで色を散りばめました。

ブリュックにインスパイアされたサウナ「 Lapuan Kankurit x Aoi Yoshizawa x Rut Bryk」。Photo: Kerttu Penttilä

――会場の反応はいかがでしたか。

ブリュックって女性のファンが多いんですよね。「私もルートが大好きなの!」と言いながら、話しかけてくれる人が多くてとても嬉しかったです。ラプアンカンクリの「SADE」についても、「この“ブリュックのテキスタイル”はいつ発売されるの?」と聞かれて、そう見えたことが嬉しかった。

 

自然が見せるさまざまな瞬間を織りあげたい

――テキスタイルをデザインする上で、吉澤さんが大切にしていることはありますか。

自然のなかにあるさまざまな瞬間からインスピレーションを受けて、それをテキスタイルにしたいと思っています。

旅先で撮った写真とスカーフの作品。Photo: Rui Nishi

――これからやっていきたいことを教えてください。

アートワークとして、手織のタペストリ(リュイユ)に力を入れはじめています。例えば、トゥルクのアーキペラゴ(群島)を自転車で旅をしながら空や海の写真を撮って、後で写真をもとに糸でスケッチします。日の出の写真を眺めながら、波に反射した光がどうツイストしているか、糸を使って描き、それをタペストリとして織り上げるのです。

たくさんの糸を使って、自然の微妙な色を表現するのはとても楽しい。デザインの仕事と両立させながら、こちらのアートワークも進めていきたいと思っています。

――ありがとうございました。

「Talvi」。ブリュックの白いタイルに色を指したような作品をつくってみたいと思って、はじめてつくった手織りのタペストリ。Photo: Rui Nishi

吉澤 葵さん。「CASE GARELLY」にて。(右)スウェーデンのテキスタイルメーカー、スヴェンソン(SVENSSON)のために制作した空間用テキスタイル「Moment(瞬間)」。(左)カーテン「Kiri(霧)」。フィンランドに無数にある湖に立つ霧をイメージ。Photo: Rui Nishi

Share this article